市民オーケストラや吹奏楽団。合奏は楽しいけれど、仕事、育児、介護、勉強などのかねあいで普段なかなか練習時間が取れないですよね。
しかし、仕事、子育て、介護など、忙しくても 手順さえ踏めば、必ず上達する方法があるのです。 焦って闇雲にやっても効果はありません。
ここでは、 アマチュアを16年経験した後、35歳になって海外の音楽院に留学した私がつかんだ、 社会人演奏家が、限られた時間を最大限活かして上達する手順についてご紹介します。
一つずつ抑えてゆけば、かならず変化がありますよ。
演奏作品の情報収集で表現の方向性を事前につかむ(簡単なアナリーゼ)

楽譜をもらった時点で作品の情報収集をしておくと、音楽表現の方向性が見つかり、目的を持った質の高い練習になります。作品についての情報の主に以下のようなことをインターネット、本、質問等で調べましょう。
- 作曲者について
- 生没年月日、時代背景、国籍、信仰、他作品
- 作品について
- タイトルの意味、スタイル、調性、作曲の経緯、作品のテーマ(隠れテーマ)
- その他
- 同時代の絵画や建築、仲の良かった作曲家の作品など
友達と集まって調べると情報交換もできて楽しく取り組めます。
また、不明点はそのままにせず、すぐに専門家や詳しい人に質問しましょう。
ただ闇雲に楽譜上の音を順番に出すだけの練習は、技術と表現の落とし所が不明確になり、練習の途中で迷子になります。
作品の情報収集することで、上達の速度もあがりますので、ぜひ実施してください。
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練習前に自分の現状を知るとストレスのない練習法を見つけられる

練習できるタイミングを見つける
新しい楽譜を手に入れた瞬間は「さぁ!がんばるぞ!」と気合が入っていますが、このモチベーションは長続きしません。なぜなら、仕事や育児などはいつも流動的で、想定外のハプニングが起こるからです。
どのタイミングでどのくらい練習に時間を取れるかを現実に即して書き出してみてください。
この時考えるべきは、実際に楽器を使った練習時間よりも、楽器を使わずに"ついで練習”が可能なタイミングです。
例えば、通勤・通学の電車内、駅まで歩きながら、コーヒー休憩のついで、お風呂に入りながら、布団に入って寝落ちするまで...が、絶好のついで練習タイミングです。
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自分の実力を見つける
また、自分の現在のスキルがどの程度なのかも分析し把握してください。こうすることで、練習のプロセスが具体的になり、確実な上達が実現します。
プロセスを無視した無謀な努力は、時間と体力の無駄になるだけではなく、怪我や燃え尽き症候群などの根本的なトラブルにつながります。
自分の現状を知れば最後まで健康的に、しかも確実に上達します。
演奏の望みと目標を明確にして内的モチベーションをキープする

作品について調べ自分の現状を知ったら、演奏の望みと目標を明確にしましょう。
闇雲に「完璧にできるようになるぞ!」と決意しても、途中で頓挫します。また、そもそも「完璧」はすなわち「上達の停止」を意味するので目標には設定しないほうがよいです。
作品のどのポイントを特に表現したいか、自分の経験を踏まえて共感する点を具体的に紙に書き出しましょう。
また、今回達成可能な技術的な目標も明確にしましょう。設定には、前項の『演奏の望みと目標を明確にしてモチベーションをキープする』で確認したことを元にするとわかりやすく、達成の可能性がグンと上がります。
作品全体をを網羅する必要はありません。「ここは!」という点をいくつか見つけてください。
練習ターゲットの仕分けで焦らず効率的に集中できる

時間の制約があるアマチュア演奏家が必ず実践するべき点です。
練習が必要な場所から手をつけることが何よりも大事になります。
せっかくスタジオやカラオケBOXを借りても、ただ漫然と曲の最初からやってみて、引っかかるたびに繰り返し練習するのでは、いくら時間があっても足りません。
上達までに時間がかかりそうなところを、楽譜が渡ったらすぐに仕分けましょう。
また、初見でも吹けそうなところや、少しだけ練習すれば大丈夫そうな場所も仕分けておきましょう。
こうすることで、練習が必要なフレーズが可視化され、「あれもこれも練習しなくちゃ!」とパニックになることを防ぎます。
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“自分自身に教えるモード”が上達を促進する

練習を開始して最初の数週間は、そのパッセージを演奏するやりかたを自分に教えていきます。
このプロセスを飛ばし、いきなりインプットやテンポアップに進んでしまう人が多いです。
しかし、やり方を知らない限りは、必ずどこかで無理がでます。
また、やり方を知らないまま進めてしまうので、いつも不安や恐怖と共に演奏する状態。これがステージでの不要な緊張を生むのです。
小学生、あるいは中学生の自分に教えるように、丁寧にやり方を知っていきましょう。
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無理がなく自然に演奏できる方法をインプットすれば上達が進み実力もアップする

「この跳躍はこういう体の使い方なんだ!」
「この音から次の音にはこういうふうに移ればいいんだ!」
と、やり方がわかったらインプットに入ります。
やり方がわからない、あやふやな状態でインプットをすると、ずっと吹きづらい状態が続きます。最終的には上達が止まります。
あなたは演奏会前に自分の上達を止めたいですか?
もし、ずっと上達し続けたいなら、必ず、自分の府に落ちる、心にスッと自然に入ってくるやり方を見つけてからインプットをしましょう。
「これでいいのかな?」とモヤモヤしたままだと、ステージの上では使えないものをインプットすることになります。
それは時間の無駄ですね。
不安がなくなったら次のテンポアップするのが成功の秘訣

毎日メトロノームに合わせていればテンポアップできると信じていませんか?
それは、半分合っていますが半分は間違いです。
なぜなら、どのような状態でメトロノームを速めていくかが成功の鍵を握っているからです。
最大のポイントは「不安がなくなったら、次のテンポにいくこと」です。
例えば♩=88で演奏してうまくいったとき、メンタルにも注目します。
「何か不安に思ってなかったか?」
「恐怖を感じていなかったか?」
「あやふやな動きはなかったか?」
を振り返ります。
もし不安や恐怖が少しでも感じられたら、次のテンポに進むのは翌日以降にします。
ここで「ノルマだから」と速いテンポにメトロノームをすすめても、不安や恐怖がある限りはスムーズな演奏にはなりません。あやふやな動きがあるなら尚更です。
これを続けると、ステージで何もできず、ただ緊張して頭が真っ白になって望みの音楽を実現せずに本番が終わってしまうのです。
テンポアップを進めるタイミングは「不安がなくなったら」です。
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目標テンポ到達後に8割のテンポで練習継続するとさらに上達が進む

テンポアップが進み、本番の演奏テンポまで達成した後は、その8割程度のテンポで練習を続けましょう。
指定テンポが♩=136だった場合、♩=108前後になります。
こうすることで、演奏の質をあげることができます。
発音、ニュアンス、リズムの正確さ、音価の正確さに加え、気持ちが穏やかなまま、かつ、演奏に必要な興奮を使って丁寧に演奏することができるようになります。
本番では興奮状態からテンポを速く演奏してしまうことが多く、事故や崩壊に繋がるケースが少なくありません。
また、吹奏楽などの本番で指揮者が普段よりゆっくり、あるいは速く指揮することも大いにあります。こういった現象にステージ上で素早く適応するためにも、演奏できるテンポに柔軟性があった方が良いです。
本番で演奏を自分のコントロール下に置けるように、テンポ目標達成後は8割程度に落として練習を続けましょう。
ときどき休んで記憶を定着させることで練習の成果を発揮できる

曲の練習が終盤に入ってきたら、ときどき休みましょう。1日おき、あるいは2日に一度はその作品を練習しないのです。そうすることで、記録がより整理され、定着し、演奏がスムーズになります。
「練習しないなんて不安!」
と考える方が多いですが、練習は不安を払拭するためにやることではありません。
練習とは楽譜に書かれてあることをステージでそのときのベストで演奏することの準備です。そこには「奏でたい」「演奏したい」という望みが不可欠です。
ステージで練習の成果を発揮するには、記憶が整理され、何の戸惑いもなく、滞りなく演奏行為が連続して実施される必要があります。
そのために必要なのは、さらなる熟達であり、ときどき練習しないということが効果的です。
まとめ

いかがでしたか?
仕事、子育て、介護などで忙しくても、手順さえ踏めば確実に上達します。吹けるところが増え、理解が進み、演奏への集中力があがり、合奏と本番がさらに充実します。
大好きな音楽での充実は、日常生活へのポジティブなパワーになります。
ぜひ、手順を踏まえて練習を進めてください。