- はじめは順調だった上達が止まった
- ずっと練習しているのに上達を感じない
- たくさん練習してるのに合奏でどうしてもミスをする
- どんなに練習してもステージで固くなって実力を発揮できない
一般吹奏楽団や市民管弦楽団のレパートリーを練習する過程で、このような悩みをお持ちですか?
その原因は、セルフティーチングをする期間をスキップしてしまったことが原因かもしれません。
この記事では、楽器の上達に欠かせないセルフティーチングのススメと手順について解説します。
セルフティーチングとは

セルフティーチング(Self-Teaching)は、読んで字の如く「自分で自分を教えること」です。
勉強法の1つとしてよく取り上げられます。復習の際に先生や講師が説明した内容を、まるで自分が講師と生徒1人二役になったように声に出して解説したりします。
クラリネット練習においては、特定の箇所を演奏するのに必要な技術について、まずやり方を探します。そして、見つけたやり方を自分自身に丁寧に教えていくことにあたります。
また、レッスン等で先生に教わったことを復習するときも、セルフティーチングの手法で能率を上げることができます。
なぜセルフティーチングが上達に必要なのか

人間は脳がやり方を知っていることしか行動として実現できません。
つまり、どのように演奏すればいいか知らないと演奏できないのです。とても当たり前です。
ですが、多くの人がまだやり方を知らないうちに「できた」「できなかった」のジャッジだけで練習時間を終えがちです。
例えば、新しい楽譜を渡されて、いきなり音を出してみる。そして演奏できなかった部分にぶち当たると「これはできない」「むずかしい」と短絡的に判断する。
「繰り返しやればできるようになる!」と数十分やってみても、イマイチ演奏できない。そればかりか、合奏でその部分が近づくとハラハラしたりパニックになってしまう。
心当たりありませんか?
これらはすなわち、その部分をどう演奏するかを知らず、自分に教えもしないから起こることです。
セルフティーチングを丁寧に行うことで、技術を確実に取得し実力も上げて、楽しく合奏やステージで演奏を実現させることができます。
では、クラリネット練習におけるセルフティーチングの手順を解説します。
セルフティーチングでクラリネットを練習する手順

練習ターゲットを定める
必ず取り組む練習ターゲットを定めましょう。
ただ最初から流し、つまづいたら反復練習する手法は時間とワーキングメモリーの無駄です。
ターゲットの種類は継続練習中のものと合奏で見つけた新たな課題などがあるかと思います。
1ターゲットあたりにかける時間は5分~10分と計算してください。ターゲットの強度やフェーズに合わせて練習時間は変わるでしょう。
カラオケボックス、スタジオ、公民館などを借りて個人練習する場合は、休憩も考慮して1時間あたり5~7ヶ所がターゲットとして適切な量です。
熟達フェーズのどこにいるか確認
各ターゲットが熟達フェーズのどの段階にあるのか確認します。セルフティーチングにおいて大事なポイントです。
なぜなら、これを見誤ると誤った奏法や望まないクセを身につけたり、パニックや恐怖が染み付いてしまいます。これらは演奏会本番で大きな邪魔になります。
算数で言ったら、足し算と掛け算の仕組みを知らず、いきなり割り算や分数に挑戦するようなものです。それだと「わからない」「パニック」「私ってダメ」で終わってしまいます。
だからこそ、熟達フェーズを見極めるのが効果的なのです。
熟達フェーズは次の通り

どの段階にあるかで、練習意識、内容、手法が異なります。
時間を有効に使い適切に上達するには、この見極めが大事です。
何を自分に教えるか確認
熟達フェーズに合わせて自分に何を教えるのか明確にしましょう。
例をあげます
- 「知る」フェーズで自分に教えること
- リズムを自分に教える
- 新しい運指を自分に教える
- 「受け入れる」フェーズで自分に教えること
- 運指の繋げかたを探して教える
- うまくいく奏法を探して教える
- 転調で変わる曲の雰囲気を受け入れて教える
- 「インプット」フェーズで自分に教えること
- 「知る」と「受け入れる」でわかったことを、自分のデフォルトにすべく反復練習をする
- 「深める」フェーズならば
- インプットした演奏方法をスムーズにして徐々にテンポアップしていくことを自分に教える。
- テンポアップに関わるメンタルを自分に教えていく
それぞれのフェーズで練習内容が違うので、セルフティーチングの内容も異なります。
今日自分に教えることは何なのか明確にすることで、無駄な時間を過ごすことを防止するだけでなく、段階的に健康に上達が叶います。
結果を分析し仮説を立てる
何を自分に教えるか明確にしたら、次は実践です。
それぞれの段階に合わせて、体の使い方、実行するポイント、気を付ける部分を明確にし、実際に演奏します。エア楽器でも同様です。
そして、起こった結果を分析します。
分析した内容から、新たな仮説を立てプランを立てそれを実行。
そして、分析。。。
この繰り返しで、精度の高い演奏技術を磨いていきます。
こうすることで、脳の命令電気信号が脱線することなく効率的に私たちの体を動かしてくれます。
つまり「吹こうとしている通りに吹けるようになる」のです。
声に出して分析したり自分に言葉をかけながら行いましょう。セルフティーチングが進みます。
適切な練習手段を選ぶ、開発する
「練習」と聞くと、反復練習ばかりが思いつきますが、それだけではありません。
練習課題と熟達フェーズに合わせて様々な手段を選び、また、開発していくことが可能です。
練習手段の例
- リズムパターンの変更
- あえて楽器を使わず運指の練習
- 息のデザインだけでアーティキュレーションを磨く
- 連符を後ろから繋げる
- 全てをスラーで演奏する
- メトロノームを使う/使わない
- ピアノでソルフェージュしてから演奏
などなど、多彩なパターンがあります。
例えば英語の勉強をするとします。
英語から日本語を答える、日本語から英語を答える、単語帳を自分でまとめる、英文から単語の意味を推測する、音読する、会話文を聞く、音声を聴きながら黙読する、シャドーイング、英語日記を書く。このように様々に手段がありますね。
クラリネット練習にも同じことが言えます。
熟達フェーズと課題にマッチする練習手段を取ることで、いつも新鮮な刺激を脳に与えて記憶を磨いていくことが、上達に繋がります。
練習ノートにメモをとる
練習ノートにメモを取ることで、セルフティーチングが加速します。
コツはノートを書く時間も練習時間に含め、後回しにしないことです。24時間後には記憶はあやふやになります。すぐ書きましょう。
メモの内容は
・今日やったこと
・発見したやりかた
・うまくいったこと
・引っかかっていること
・メンタル
・次の練習のアイディア
・テンポアップの進捗
などです。
記録に残し見返すことで復習になります。
また、進捗を管理できるので次に自分に何を教えたらいいのか、熟達フェーズがどこまで進んだか明確になり、効率よく練習を進めることができます。
楽譜に簡単なメモを残す方も多いですが、別にノートをつけることをオススメします。
どんな勉強もノートを活用しますよね。練習も同じことです。
まとめ
いかがでしたか?
上達が進むセルフティーチングついて解説しました。
自分に丁寧に教えることをサボらずやると、上達だけでなく、実力もアップします。また、合奏や演奏会本番などステージでしっかりと練習の成果をだすことができます。
無闇にただ音を出すことをやめ、セルフティーチングで楽しく上達していきましょう!